「思春期ってなんだろう」(金子由美子)

子どもたちと向き合うエネルギーをいただきました

「思春期ってなんだろう」
(金子由美子)岩波ジュニア新書

中学校の養護教諭は大変です。
昔とちがって
心を病んでいる生徒のケアが
業務の大半を占めているからです。
かつて私の勤務していた学校でも、
保健室が野戦病院の如く、
心を病む子どもたちの
避難所と化していたことがありました。
私も授業の空時間ごとに
保健室に顔を出し、子どもたちの
話の聞き役に回りましたが、
1時間話を聞いているだけで、
相当なエネルギーを吸い取られるような
感覚を覚えました。
これを毎日続けている養護教諭は
偉いと思います。

さて、本書は、
そんな養護教諭の著した一冊です。

思春期特有の子どもの心の揺れを
的確に捉え、解説しています。
それもありがちな例だけではなく、
ネットにかかわる
子どもたちの世界の変化といった
最新事情や、
性的マイノリティといった
これまで少なかった事例についても
取り上げているのです。
筆者の幅広い経験と活動に
裏打ちされた内容です。

一人で悩んでいる子どもたちが
たどりついてほしい一冊だと思います。
全国の中学校図書館に
ぜひ置いてほしいと思います。

そして本書は、
子どもだけではなく
大人も読むべき一冊だといえます。
いや、大人こそ読むべき内容に
溢れた一冊なのです。
私も、教員として反省を迫られる箇所が
複数ありました。

「生き方のモデルとして
 子どもの前に立つのですから、
 素敵なおとなで
 いて欲しいと思います。
 若い教員には、
 「教員は教壇というステージに立つ
 役者なのよ
 言葉やファッションや
 言葉遣いにも気を遣って、
 生徒たちの視線を
 釘付けにしちゃおうよ」と
 アドバイスしています。」

おっしゃるとおり。
明日から気を付けます。

「生まれてくる環境を
 選べない子どもたちが、
 おとなの都合により、
 健康に生きる権利や、
 教育を受ける権利を
 脅かされている。
 それを目の当たりにしながら、
 現行法の保護措置は
 不十分であるために、
 何もできないもどかしさがつのる。
 しかし、今「子どもの権利条約」は、
 手をこまねいていた

 私自身を問い質す。
 子どもの最善の利益を
 保障するために、
 おとなとしての責任や義務を
 どう果たしているのかと。」

この一文は
私自身にも鋭く突き刺さってきました。

本書を読んでよかった。
子どもたちと向き合う
エネルギーをいただきました。
思春期真っ只中の中学生・高校生、
そして思春期の子どもを持つ
お父さんお母さんに
超お薦めの一冊です。

※今日は「思春期」というテーマで
 午前に
 「空が青いから白をえらんだのです
  奈良少年刑務所詩集」を、
 そして午後は
 本書を取り上げてみました。

(2020.7.1)

Khusen RustamovによるPixabayからの画像

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